金の基礎知識
地球上には多くの金属が存在しますが、とくに稀少で、金属特性が優れ、美しい金属は「貴金属」と呼ばれています。ジュエリーに使われる貴金属は金、銀、プラチナが代表的です。中でも金は人類との関わりが最も古い、貴金属界のリーダーです。
薄く延び、耐性が高い。ジュエリーに理想的な素材
金の英語「gold」の語源は、「きらきら輝く」を意味するゲルマン語「gulth」からといわれます。漢字の「金」も「土の中で輝くもの」を表す象形文字からきています。
特徴1 展延性に富む
金属が薄く広がり延びる性質のことを「展延性」といいます。金は展延性に富んだ金属で、1グラムの金は3000メートルの糸になります。展延性の高さは加工のしやすさに繋がり、古来よりジュエリーに重用されています。
特徴2 耐性が高い
ほとんどの化学物質と反応せず、長い間放置しても錆びません。王水(濃塩酸と濃硝酸の混合液)には溶けます。
特徴3 比重が高い
金の比重は19.32。プラチナより低く、銀よりは高い数値です。金属全体で見ると高いといえます。(プラチナ21.45、銀10.50、鉛11.34、銅8.73、鉄7.86、亜鉛7.14)
人間を古くから魅了し、特別な物として敬われた「金」
人類と金が出会った時期は定かではありませんが、そうとう古いことは間違いありません。ブルガリアのヴァルナ遺跡からは、金石併用時代後期(紀元前4500~4000年頃)の金製装身具がたくさん見つかっています。古代エジプト時代は優れた黄金芸術の宝庫です。金は王者の印とされ、ツタンカーメン王の墓からは、黄金のマスクや棺、寝台や玉座、護符、ジュエリーなど、総重量90キロにも及ぶ秘宝が発見されています。ヘレニズム時代(紀元前335~紀元前35年)の中金東地域では、すでに金のジュエリーが量産されていた模様です。肩から羽根をつけた人間をモチーフにした金製のイヤリングが流行していたらしく、微妙にデザインが異なるものがたくさん見つかっています。
古墳から見つかる金製ジュエリー
日本でも5世紀頃の古墳から、金の腕輪や指輪、金の線を巻き上げた髪飾り、「垂飾付耳飾り」と呼ばれる揺れるデザインのイヤリングや、耳輪などが見つかっています。多くは日本で作られた物ではなく、中国や朝鮮半島の製品だと思われますが、6世紀頃の古墳からは一部、国産品と思われる金の副葬品も発見されています。
マグマの中で生成した金は、地下水と一緒に岩盤の割れ目を通って地表に昇ります。途中で石英と一緒に沈殿して固まったものが、金を含んだ「金鉱石」です。金は1トンの金鉱石から数グラムしか産出出せず、10グラム以上採れる鉱山は非常に優秀です。金は川底から砂金の状態で発見されることもあります。浸食作用で山から削り取られた金鉱石は、川に運ばれ流されるうちに、砂金となって水底に堆積します。人類が最初に見つけた金はおそらく、川底で光る砂金でしょう。古代エジプト時代、ナイル川流域は金の大産地で、国家規模で採掘や採集が行われていました。金は日本でも産出します。「続日本紀」には749年、陸奥(宮城県)から砂金が採集され、東大寺大仏の建立に使われたと記録があります。平安~室町時代は年間平均50キロ、合計30トンも産金し、中尊寺金色堂や金閣寺の建造に充てられました。現在も日本での産金は続き、鹿児島県の菱狩鉱山の金鉱石からは、1トン当たり約40グラムという高品位の金が採掘されています。
ゴールドは、純粋の状態では酸素やほとんどの化学物質に対して反応を起こさないので、空気中や水中では永遠に変化せず、錆びることもありません。ただ、王水という濃硝酸と濃塩酸の混合液には溶けてしまい、また水銀と接触するとアマルガム(水銀と他の金属とでつくられる合金)になります。融点(1064℃)と比重(19.3)は銀より高く、プラチナより低くなります。
純粋のゴールドは非常に軟らかく、延びやすく、1グラムのゴールドで焼く3000メートルにまで伸ばすことができます。
ゴールドの最も優れた特徴は、加工がしやすく、長い年月を経ても腐食しにくく、輝きが失われないことです。ゴールドの尊さは旧約聖書にもうたわれており、その価値は歴史的には貨幣としてより、装飾美術品として高く評価されていました。
ゴールドが装飾品として使われたのは、その永遠性や不変性が人間を悪魔から守るとされ、魔よけとして、頭、喉、手首や耳など体の大切な部分に着けられたことから始まりました。時代を経て、ネックレス、リング、イヤリング・ピアス、ブレスレットなどのゴールド・ジュエリーになって人々の身を飾っているのです。
合金
金属を他の金属と一緒に溶かして混ぜ合わせることを「合金」といいます。ジュエリーにつかわれている貴金属は金を含め、銀もプラチナもほとんどが合金です。100%の純金(純銀、純プラチナ)は柔らか過ぎて、ジュエリーの素材としては不向きだからです。傷が付きやすく、使っているうちに伸びたり曲がったり、壊れる可能性があります。主体の金属に加える他の金属を「割り金」と呼びます。割金に使われる金属の基本は銀と銅です。合金にすることにより、耐摩耗性や強度、硬度を高めることができ、色、デザインの多様化が可能になるます。さらに、ゴールドの比重(19.3)は、鉄の2.5倍も重いため、軽い金属と合金にすることによって、軽量化することもできます。
金のベースカラーはもちろんイエローゴールドですが、割金の種類や配合によって、さまざまなカラーバリエーションが生まれます。銀を多く加えるほどグリーンゴールドに近づき、銅を多く加えるほどレッドゴールドに近づきます。その他、ニッケルやパラジウムを加えることもあります。
ゴールドの純度(品位)を表すカラットは世界共通の単位で、K、ktなどと表示されます。主な品位区分には、K24(純金)、K22,K18、K14などがあります。なお、18KのようにKが後に付く場合もあります。
一般的に日本では、金含有率は24分率で表されています。日本やイタリアで作られるゴールド・ジュエリーはK18が中心ですが、アメリカでひゃK14、イギリスではK9が普及品の中心となっています。
純金は傷がつきやすいので、ジュエリーとしては敬遠されがちでしたが、「純粋」「本物」に対する根強い願望があり、現在では微量の添加物を加えて、耐摩耗性や硬さを向上させ、熱を加えても軟化しにくく、経時軟化のない「990ゴールド」や「999ゴールド」などの高品位ゴールドが開発されています。
カラーゴールド
ゴールドを合金にする目的には「色を変える」ということが挙げられます。プラチナや銀の合金の色はほとんど純粋な状態と変わりませんが、ゴールドの場合は加える金属の種類と割合によって、大幅に色を変えることができるという大きな特長をもっています。それゆえ、ゴールド合金をカラー・ゴールドというのが一般化したわけです。
信頼の証、造幣局の禁制品検定制度
宝石の重さの単位・カラットと呼び方が一緒で紛らわしいのですが、宝石用のカラットは「ct」、金合金用のカラットは「K]と表記します。K18の読み方は18カラット、18キン、もしくはケイ18となります。
品質を明確にするために、財務省造幣局では金製品の国家検定を実施しています。検定を受けるか否かは販売者の任意で、合格すると製品に証明の刻印が打たれます。刻印は24分率ではなく、1000分率が使われています。
プラチナとホワイトゴールドの違い
『プラチナの第一の特徴』は、融点が1769℃と極めて高く、比重も21,45と大変高いことです。今日でも、鉱石からの精錬には長い精製過程がかかり、高度な技術が必要とされています。また、採掘された総量もわずかで、プラチナの鉱石1トンに含まれるプラチナの量は約3グラムと希少です。
『プラチナの第二の特徴』は、科学的安定の高さで、貴金属中屈指のものです。大気中、高温でも変化せず、王水以外の酸にもアルカリにも解けません。水銀とも反応しません。色調は、白系ですが、銀のような白さと違い、やや黒っぽい渋みのある独特の白さが特徴です。
最も一般的なプラチナ合金は、プラチナ900です。このプラチナ900の代表的な合金は、プラチナ90%に10%のパラジュウムを加えた合金です。溶解の温度こそゴールドに比べればずっと高いということはありますが、高温でも酸化せず、容易に加工することが出来ます。
『ホワイトゴールド(WG)』という表示を貴金属ジュエリー製品に見かけます。ホワイトゴールドを和風に言い直すと白金。白金はプラチナですから、これらは同じものかという疑問が生じ、一般消費者にとって大変紛らわしいことです。
ホワイトゴールドはプラチナではなく、金合金の一種で、割金にパラジュウム等を用いた白い金です。この紛らわしさを招いた白金という名前の遠因は、プラチナ発見当時ヨーロッパ人たちがoro blanco,white gold (いずれも白い金の意味)などと呼んだんだことにあります。
ホワイトとはいっても地が金なので、合金になっても多少黄色味が残ります。そのため、ほとんどのホワイトゴールドのジュエリーには、ロジウムメッキがされています。通常、メッキがはがれることはありませんが、修理で火を入れると黄色味がかかった地肌が出てしまうため、再度メッキをやり直さなければなりません。また、イエローゴールドのジュエリーにロジウムメッキをかけると、完全なホワイトに変身しますが、メッキで色を大きく変えることはジュエリーには馴染まないものです。
プラチナの基礎知識
プラチナの和名は「白金」といいます。日本人は大変プラチナが好きな民族で全世界のジュエリー用プラチナ需要のうち、5分の1を日本が占めています。
「重くて火にも溶けない白い金」といわれたプラチナ
色は銀と同じ白系てすが、銀よりもわずかに黒みがかった渋みのある色合いをしています。
特徴1 融点がきわめて高い
プラチナの融点は1772℃。金の1064℃、銀の960.8℃よりはるかに高温づす。現在はプラチナの加工技術は完成していますが、かつてはこの溶けにくさが壁となり、ジュエリーには使われない時代が長く続きました。
特徴2 比重が重い
プラチナの比重は21.45。金は19.32、銀は10.50です。
特徴3 展延性が高い
大変延びやすく、金箔のように0.2ミクロン程度にまで薄くできます。粘りも強いため、ジュエリー素材に適しています。
特徴4 耐性が高い
王水(濃硝酸と濃塩酸の混合強酸液)以外に溶けず、銀のように自然に黒ずむこともありません。
世界最古のプラチナ製品は化粧用の小箱
古代からさまざまな用途に使われてきた金・銀に比べて、プラチナが人類と深く関わるようになったのはごく最近です。
利用された歴史がないわけではなく、金・銀と同じくコダイエジプト時代の遺跡からは、プラチナ製品が見つかっています。紀元前750年頃の女性神官・シェペヌペット一世の墳墓から発見された小さな化粧ケースは、表面に彫られた象形文字の一部にプラチナが象眼されています。「テーベの小箱」と名付けられたこの作品は、世界最古のプラチナ製品とされていますが、古代エジブト人が銀と違う金属としてプラチナを扱っていたかは疑問です。
インカ帝国の驚くべきプラチナ使い
実際にプラチナを使いこなしていたのは、南米イクアドルのインカ帝国(12~15世紀頃)です。卓越した金属文化を持っていたインカ人たちは、プラチナを「銀とは違うもの」ときちんと認識していました。エスメラルダ地方の遺跡からはたくさんのプラチナ製リングやペンダント、鼻輪、耳飾りが発見されていますが、それにしてもいったんどんな技術で、極めて高温でしか融解しないプラチナを精錬していたのかは謎です。
「小粒の銀」と名付けられた不遇の歴史
プラチナはスペイン語で「小さな銀」を意味します。1735年、スペイン人の海軍将校ドン・アントニオ・ウローラが、コロンビアのピント川近くで見つけた白い金属を「ピント川の小さな銀(=プラチナ デル ピント)」と呼んだことに由来します。
実はこの呼称には、プラチナを馬鹿にした意味合いも含まれています。当時のプラチナは、砂金に混ざった
砂白金(砂状のプラチナ)の状態で採取されていました。当時は砂金と砂白金の分離はとても難しく、しかも分離したところで砂白金は、加工の術が分からない厄介者。今からは想像もつきませんが、当時は銀よりも価値が低く、砂金掘り師たちは砂白金が見つかると土に埋めて戻したそうです。
溶解法の発見がプラチナの転機に
1751年にプラチナに転機が訪れます。イギリスの科学者チャールズ・ウッドとウィリアム・ブラウンリッグが英国王室協会に「プラチナは他の金属と性質が異なる」という共同研究の成果を報告しました。ヨーロッパ中の研究者たちはがぜんプラチナに注目し、1779年にはドイツのフランツ・K・アハルトによって、砒素を加えて加熱する溶解法が確立します。
ジュエリー素材として不動の地位を築いた20世紀
加工の途があると分かると、実験的にいくつかのジュエリーブランドがプラチナ製品を作りました。18世紀のフランス宮廷では、ルイ16世の専属金細工師、マール・マチェンヌ・ジャネティが苦心の末に、見事なコーヒーポットや砂糖壺を製作しています。本格的にジュエリーに取り入れたのは、フランスの老舗宝飾店カルティエです。19世紀初頭にプラチナで作られた、当時流行のガーランド・スタイルジュエリーは、プラチナの特性を見事に生かした繊細で精考巧なつくりで、ダイヤモンドの輝きを一層引き立たせます。おまけに、銀のようにしだいに黒ずむこともありません。プラチナ人気はジュエリー界に瞬く間に広まり、伝統を重んじるヨーロッパ王室でさえも、王冠やティアラにプラチナを取り入れました。
ジュエリー用プラチナは、パラジウムとの合金が主流
ジュエリー用のプラチナは、硬度や加工のしやすさの点から、パラジウムを割金にした合金が一般的です。
プラチナの含有率は1000分率で表します。日本の国家検定ではPt1000、Pt950、Pt950、Pt850の4品位制を取っています。Pt1000は純プラチナ100%、Pt950は含有率95%の意味。Pt850以下の製品は、ジュエリーとしては一般的ではありません。
最も一般的なプラチナ合金は、プラチナ900です。このプラチナ900の代表的な合金は、プラチナ900‰に100‰のパラジウムを加えた合金です。溶解の温度こそゴールドに比べれずっと高いということはありますが、高温でも酸化せず、また、鍛造もしやすく、赤熱した状態での鎚打ちによって自由に変形させるなど、容易に加工することができます。硬さは65~140Hvまで上がります。リング、ブローチなどのほとんどには、プラチナ900が使用されています。
プラチナ900の三元合金には、上記合金のパラジウムの一部を、それぞれ10~30‰のルテニウムRu、あるいは30~70%の銅Cuで置き換えたものなどがあり、硬さや切削性を向上させるなどの効果があります。
プラチナ850の代表的な合金は、850‰のプラチナにパラジウム割金150‰を加えた合金です。硬さは、前記の二元プラチナ900より硬く、三元合金のプラチナ900並の75~200Hvまで上がります。しかも、製鎖性がよいので、専らネックチェーンなどに使われます。なお、日本では、プラチナ含有量が850‰未満の製品には、政府の品位証明はもらえないことになっています。
真珠のよくある質問
Q1.パールを鑑別する目的はどのようなものですか?
Q2.鑑別の基準はあるのですか?また、国際的に統一されているのですか?
Q3.鑑別はどんな段階でおこなわれるのですか?
Q4.手持ちの真珠を鑑別してもらえますか?
Q5.鑑別書には何が記載されているのですか?
Q6.鑑別書を見る時のポイントはありますか?
Q7.良質なパールの見分け方はあるのですか?
Q8.パールの質を保つために気をつけることはありますか?
Q3.鑑別はどんな段階でおこなわれるのですか? 鑑別書は、一粒一粒を鑑別するのではなく、あくまで製品として出来上がっているものに対して作成するものです。ですから、タイミングとしては、出来上がった商品を鑑別します。その前段階の素材の状態を、生産状況、加工製造過程などに、鑑別者自らの知識や経験、業界事情を加味して判断します。 |
Q6.鑑別書を見る時のポイントはありますか? ご自分の使用目的、予算、感性によって見るべきポイントは変わりますので、一概には言えません。ただ、強いて言えば、仕上げのグレードは木にして見るようにすると良いでしょう。真珠は養殖管理、加工処理、自然物ゆえの自然変化など様々な要素があり、仕上げの欄に総合判定が加味されています。 |
真珠用語集
これだけは知っておきたいパール用語集
【母貝】【核】
【核入れ】
【浜揚げ】
【巻き】
【テリ】
【キズ】
【花珠】
【ピース】
【真珠層】
【採苗】
【シード】
【マベ】
【ケシ】
【ブリスター】
【匁(もんめ)】
【ノット】
【グラデーション】
【ユニフォーム】
【漂白】
【連組み】
【母貝】
養殖に使われる真珠貝のこと。海洋産では、主にアコヤ貝、クロチョウ貝、シロチョウ貝、マベ貝、アワビ貝などがあります。淡水産では、イケチョウ貝、ヒレイケチョウ貝、カラス貝が代表的。この母貝の違いが真珠の個性を生みます。
【核】
養殖時に、真珠のもととして真珠貝の中に入れるもの。こうした核を持つ真珠を有核真珠と呼びます。真珠の中には、天然真珠や淡水真珠のように、核を持たないでできる無核真珠もあります。
【核入れ】
母貝に核とピースを入れる作業。真珠養殖の中で一番重要です。核入れの技術によっても、真珠の出来が大きく左右されます。
【浜揚げ】
養殖された真珠を母貝から取り出すこと。日本のアコヤ真珠の浜揚げは、色やテリの良くなる12月~翌年2月にかけて行われます。
【巻き】
核を取り巻く真珠層の厚さ。巻きは、養殖期間が長いと厚くなる傾向にあります。巻きが厚いと大きなサイズになりますが、整った球体は少なくなります。
【テリ】
真珠が反射する光の質。真珠層の表面構造と層の厚さや均一さ、光透過性によって左右されます。表面が滑らかで、かつ真珠層の構造が規則正しい場合に、真珠特有の美しいテリが生まれます。
【キズ】
キズの数や大きさ、種類、位置によって真珠の品質に大きな影響を与えます。キズは養殖中にできる天然キズと加工・取り扱いによってできる加工キズがあります。
【花珠】
養殖真珠の中で、キズが少なく、形、巻き、テリ、色の良い高品質なものをいいますが、明確な基準などは特にありません。
【ピース】
貝の外套膜の細胞をカットした細胞断片。ピースを核と一緒に母貝に移植すると、増殖して真珠袋となって真珠質を分泌します。ピースは、真珠の色に大きな影響を与えるといわれています。
【真珠層】
アラゴナイトと呼ばれる炭酸カルシウムの結晶と、コンキオリンと呼ばれる硬タンパク質が積み重なってできた層。真珠特有の輝きを生む重要な部分。
【採苗】
真珠の母貝となる稚貝を採取すること。自然に受精したものを採取する天然採苗、人工的に受精させる人工採苗があります。
【シード】
天然で小粒の無核真珠のことで、淡水産・海洋産を問わず、約2mm以下のものを指します。養殖開始以前は、シードパールを使用した繊細なデザインのジュエリーが数多く作られました。
【マベ】
真珠を作る母貝のひとつ。このマベ貝からできる真珠をマベ真珠といいます。マベは構造上、真円真珠を作るのが難しく、半円真珠が主流です。そのほか、母貝にかかわらず、半形の真珠をマベと呼ぶことがあります。
【ケシ】
養殖真珠の副産物として採取される無核の海洋真珠。以前は、アコヤ貝から採れる小粒の無核真珠を指しましたが、現在は広く無核真珠に用います。
【ブリスター】
貝の内側にコブのように作られる真珠。中国の仏像真珠やマベ半形真珠がこれにあたります。偶然異物が混入してできる天然のブリスターもあります。
【匁(もんめ)】
真珠の目方を表す国際単位。真珠の養殖が日本から始まったため、日本古来の単位が国際的に使われています。1匁=3.75g。一般には使いませんが、生産者が売るときや商取引で使用されます。
【ノット】
ネックレスの糸が切れて、真珠がバラバラになるのを防ぐため、珠と珠の間に入れる結び目のこと。端からいくつかの珠の間に作られる場合があります。
【グラデーション】
ネックレスの中央にもっとも大きな真珠を置き、その左右が対象となるように、後ろへ向かって次第に小さくしていく組み方。1950~60年代に人気のあったデザインです。
【ユニフォーム】
珠サイズの差を0.5mm以内にして連組みされたネックレス。ほぼ等しい大きさの珠が並ぶデザインで、現在一番多く見られるタイプです。
【連組み】
「連台」と呼ばれる溝のある木製のトレーの上で、両穴珠のサイズ、形、巻き、キズ、色、テリなどの品質をそろえたものを並べ、糸を通してネックレスに仕上げることをいいます。
【漂白】
過酸化水素水などを用いて、真珠に含まれるシミや色素を漂白して真珠の美しさを引き出す処理。この漂白がていねいに処理されていないと、時間が経ったときに変色しやすくなります。
淡水真珠について
○ユニークな形と色を楽しめる 個性派の淡水パール
形の面白さと繊細で軽い着け心地が魅力の淡水真珠。 凝ったデザインのジュエリーで楽しみたい真珠です。 淡水真珠は、川や池に生息する貝を母貝としています。アメリカやヨーロッパ、日本でも生産されていますが、現在流通している淡水真珠のほとんどは、中国の揚子江流域で養殖されたものです。中国の淡水真珠のほとんどは、中国の淡水真珠の歴史は古く、13世紀にはすでに行われていたとか。しかし、今日の養殖技術は、日本で研究されて中国に伝えられたもので、海洋真珠に近い形やサイズも生産できるほど進んでいます。 海洋の養殖との最大の違いは、淡水真珠では核を入れずに作る方法が主流だということ。一年貝の外套膜に、同じ一年貝から採取したピースだけを入れて作るため、生育には長い時間がかかります。3~5ミリで2~3年、5~7ミリで3~5年、7ミリ以上で5~8年ほどかかり、平均は5年ものが多く採取されています。一般的に、南の漁場で養殖すると成長が早く、北の漁場で養殖すると真珠層が緻密になり、光沢のよいものができるため、最初は南で育て、採取の1年前に北へ移してテリをよくする業者もあります。 80年代までは、カラス貝を用いた養殖が多く行われていましたが、カラス貝から採れる真珠は、サイズが小さくシワが多いため、需要は次第に減少。90年代以降は、ヒレイケチョウ貝を使うことで、シワが少なくテリや色目の美しいものが採取できるようになりました。また、8ミリ以上のサイズや、球形率のよいものも作れるようになってきています。●淡水真珠● | 無核のものが多いため、海洋産真珠に比べ軽い印象。3~10mm程度と大きさに幅があるので、大小の組み合わせによって個性的なデザインを楽しめる。また、ライスを中心に、スティックやクロスなど、特異な形をしたものが見られる。やや退色しやすく、熱に弱いので保存には注意が必要。 | |
●母貝● | イケチョウ貝、ヒレイケチョウ貝、カラス貝、ショウモンカン貝 | |
●採取地● | 中国、日本、アメリカ | |
●サイズ● | 約3~10mm | |
●形● | ライス、ラウンド、オーバル、ドロップ、ボタン、バロック、ポテト、エッグなど | |
●色● | ホワイト、オレンジ、パープル、ワイン、コニャック、ラベンダー、アプリコットなど |
白蝶真珠について
○コバルトブルーの南洋が育てた 華やかな白蝶真珠
大粒で圧倒的な存在感が魅力の白蝶真珠は、暖かな南洋育ち。 母貝によってゴールド系、シルバー系の2種類の輝きがあります。 大ぶりで華やかな真珠を生み出すシロチョウ貝は、貝殻自体の真珠層も美しく、工芸品や装飾品として、古くから珍重されてきました。生息地域は、オーストラリア近海とインドネシア、フィリピン近海の狭い地域に限定されています。 真珠養殖に使用されるシロチョウ貝には、真珠層縁が銀白色で「シルバーリップ」と呼ばれるものと、黄色で「ゴールドリップ」と呼ばれるものがあり、この違いが養殖される真珠の色に大きく影響します。オーストラリアではシルバーリップが主流のためホワイト系の真珠が多く、インドネシア・フィリピンではゴールドリップが主流のためクリームやイエロー、ゴールデンなど黄色系の真珠が多く採取されます。養殖期間は、地域によって多少異なり、オーストラリアで24ヶ月間、インドネシア・フィリピンで18~24ヶ月間。真珠を取り出すために海水から揚げる時期は、オーストラリアでは南半球の冬にあたる6~8月に行われますが、フィリピンでは特に決まっておらず、随時行われます。黒蝶真珠同様に、一度真珠を取り出してから、再び核を入れて大珠を作る製法が行われていますが、2回目は真珠の色を決めるピースを挿入しないので、様々な色の真珠が出来上がります。 真っ青な海で健やかに育った白蝶真珠には、まぶしい太陽や果てしなく広がる大地のような、明るく大らかな雰囲気があり、身につける人を元気にしてくれそうです。●白蝶真珠● | 大ぶりなシロチョウ貝から採れるため、アコヤ真珠よりも大粒。さらに、暖かい海で育つため、光に透かしても核が見えないほど巻きが厚いのが特徴。色は大きくシルバー系とゴールド系に分けられ、中でも「茶金」と呼ばれる深みのあるゴールドカラーは珍重される。重厚で格調高いテリと澄んだ色彩を持つものが良質。 | |
●母貝● | シロチョウ貝 | |
●採取地● | オーストラリア、インドネシア、フィリピン、ミャンマー | |
●サイズ● | 約7~20mm | |
●形● | ラウンド、セミラウンド、オーバル、ドロップ、ボタン、セミバロック、バロック、サークルなど | |
●色● | ホワイト(含ホワイトピンク)、シルバー(含シルバーピンク、シルバーブルー)、クリーム、ゴールド、ファンシーなど |
黒蝶真珠について
○タヒチの海で生まれる神秘の輝き 気品ある黒蝶真珠
タヒチの美しいラグーンと穏やかな海で大きく成長する黒蝶真珠。 グリーンブラックの美しい輝きが独特の魅力を漂わせています。 現在、黒蝶真珠のほとんどがタヒチで採取されています。母貝となるクロチョウ貝は、赤道を挟んで南北30度以内の緯度の暖かい海域に生息。島の周囲や環礁内のラグーンなど、潮の流れが緩やかで、海水がきれいな場所を好んで棲み、4~5年で平均10~20センチの大きさになります。 タヒチでは、人工的なコレクターを海に沈め、天然で孵化した稚貝を付着させて採取したものを養殖用の母貝に用います。通常、ピース(外套膜の断片)を採るための貝は2年間、真珠の核入れを行う母貝は3年間養殖。色目に特徴がある黒蝶真珠は、ピース貝の選定がとても重要。成長のよい2年目の中から、貝殻真珠層の色がいわゆる「ピーコックカラー」と呼ばれる赤みのあるグリーンブラックのものを選びます。ブラック系がもっぱらでしたが、最近のマルチカラーの流行であらゆる色が人気です。 黒蝶真珠は通常、1回目に9ミリの核を挿入し、1年半~2年間養殖して、10ミリ以上になったものを採取。その後、母貝を生かしたまま、空になった真珠袋に核のみを挿入して2回目の養殖を行い、次は11ミリ以上の大珠を作ります。しかし、大きな核を挿入するには高い技術が必要。近年は、9ミリ以上の大きな核を挿入する技術者が減り、8ミリなどの小さな黒蝶真珠も見かけます。とはいえ、黒蝶真珠の多くは大粒で華やか。落ち着きのあるダークカラーに、鮮やかな虹色の輝きを秘めた魅惑的な真珠です。●黒蝶真珠● | 0.8mm以上の厚巻きが主流。赤、青、黄色系の3つの色素が混ざり合い、さらに光の反射、拡張などによって神秘的な色を放つ。暗い透明フィルムを通して光をあてると、真珠に映りこんだ光源が、グリーンに発光して見える。表面に筋の入ったサークル珠が特徴的。 | |
●母貝● | クロチョウ貝 | |
●採取地● | フレンチポリネシア海域、クック諸島、フィジー島、オーストラリア、沖縄 | |
●サイズ● | 約10~16mm | |
●形● | ラウンド、セミラウンド、ドロップ、サークル、オーバル、ボタン、バロック、ケシなど | |
●色● | ブラック、グレー、ブラウン、グリーン、モスグリーン、ピーコックグリーン、ブルー、レッド、イエロー、クリーム、ホワイトなど |
アコヤ真珠について
○豊かな四季に育まれた 日本のアコヤ真珠
今日、世界中で盛んな養殖真珠の原点といわれるアコヤ真珠。 その美しさは、多くの日本人が重ねた努力から生まれています。 アコヤ真珠は、日本の豊かな海で育てられた養殖真珠です。寒暖差のある水温の影響で、真珠の中でももっとも透明感があり、キメが美しいといわれています。明治26年、御木本幸吉の半円真珠の養殖に始まり、明治40年に現在のような丸い真円真珠養殖技術が確立されました。このアコヤ真珠の養殖技術が、現在の黒蝶真珠、白蝶真珠、淡水真珠養殖の基本となったといわれています。 アコヤ真珠の養殖は、まずアコヤ貝の稚貝を育てることから始まります。親貝を人口受精させ、水槽の中で約1~2ヶ月間、孵化したした稚貝が2ミリ程度に成長するまで飼育。その後、稚貝をネットに入れ、水温22~25度の海に放ちます。成貝となるまでには、約2年もの時間をかけてじっくりと育てられます。無事に成貝となったものは、5月頃と10月頃に、真珠のもととなる核入れがなされます。真珠の芯となる核と貝の外套膜の断片(ピース)を入れた貝は、一度穏やかな内海で養生させ、2~3週間後に沖に移動。台風や急激な温度変化、赤潮などから守るために、ときには貝を移動させたり、付着した藻を除去したり、いい真珠に育つよう手間をかけます。 最終的に、真珠が貝から採取されるのは12月前半から1月後半。水温が下がると、薄くて粒子の大きなカルシウム結晶が真珠の表面を覆って色やテリがよくなるからです。世界中で愛されるアコヤ真珠の輝きは、長い時間と多くの人の努力で生まれます。●アコヤ真珠● | 10mm以下で、一般的には4~6mmのものが主流。 他の真珠に比べて巻きが薄いので、真円に近い美しい球形が多いといわれ。四季のある日本で育つアコヤ真珠は、水温が低くなる冬場になると、薄くて大きなカルシウム結晶が真珠の表面を覆うため色やテリがいいのが特徴。 | |
●母貝● | アコヤ貝 | |
●採取地● | 愛媛、三重、九州(長崎、熊本、佐賀、大分、鹿児島) | |
●サイズ● | 約2~10mm | |
●形● | ラウンド、セミラウンド、セミバロック、バロック | |
●色● | ピンク、ホワイト、グリーン、ロゼ、クリーム、イエロー、ゴールデン、ブルーなど |
真珠の種類と特性について
養殖真珠は母貝で分類されます。
アコヤ真珠アコヤガイはベニコチョウガイの日本名です。大きさは約10㎝で、他の養殖母貝に比べて小型です。日本では愛媛、三重、九州を中心に養殖されています。サイズは2~10㎜くらいで10㎜以上のものは極端に少なくなります。標準6~8ミリ、最大径12ミリほどです。形は丸、セミラウンド、セミバロック、バロックなど、色はホワイト、ピンク、クリーム、ゴールドがあります。真珠層の厚さは『巻き』と呼ばれ、耐久性を考慮すると0,3㎜以上の巻が必要でしょう。アコヤ真珠には他の真珠にない独特の色、つやがあるが、これは厚さが0,2から0,4ミクロンという極めて薄いアラゴナイトと呼ばれる炭酸カルシュウム結晶とコンキオリン硬蛋白の積層構造に由来するものです。 アコヤ真珠は他の真珠に比べて巻が薄いので、真円に近い美しい球形が多いといわれます。四季のある日本の海で育つアコヤ真珠は、水温が低くなる冬場になると、薄くて大きなカルシュウム結晶が真珠の表面を覆うため、色やテリがいいのが特徴です。 シロチョウ(南洋)真珠シロチョウガイは奄美大島以南の赤道を中心にインド洋、西太平洋に生息しています。真珠層縁が銀白色のものと黄色のものがあり、それぞれ『シルバーリップ』、『ゴールドリップ』と呼ばれ、この違いが養殖される真珠の色に大きく影響します。通常シロチョウガイから産出される真珠は『南洋真珠』とも呼ばれます。 白蝶真珠の最大の魅力は、その大きさで、アコヤ真珠に無い14~20㎜のような大粒の真珠は、迫力があります。形も丸以外にセミラウンド、ボタン、ドロップ、バロック、ペアー、オーバルなど種類が多い。色についてはホワイトシルバー系から黄色系で、グレー系のものもあります。白蝶真珠の最大の魅力は、その大きさで、アコヤ真珠に無い14~20㎜のような大粒の真珠は、迫力があります。形も丸以外にセミラウンド、ボタン、ドロップ、バロック、ペアー、オーバルなど種類が多い。色についてはホワイトシルバー系から黄色系で、グレー系のものもあります。 シロチョウ真珠は、大ぶりなシロチョウカイ貝から採れるため、アコヤ真珠よりも大粒で、さらに、暖かい海で育つため、光に透かしても核が見えないほど巻が厚いのが特徴。色は大きくシルバー系とゴールド系に分けられ、中でも『茶金』と呼ばれる深みのあるゴールドカラーは珍重されます。重厚で格調高いテリと澄んだ色彩を持つものが良質です。 クロチョウ真珠クロチョウガイはアコヤガイ、シロチョウガイと同じウグイスガイ科の二枚貝で、赤道を中心とする南北約30度以内の暖かい海域に生息し、生息最適水温は24~29℃位で、18℃以下では成長が止まり、11~12℃になると死ぬとされます。クロチョウ真珠は一般に『黒真珠』と呼ばれ、一部小さいものもありますが、シロチョウ真珠同様にサイズが10㎜以上と大きく、このサイズの大きさに加えてもう一つの特色は、その色である。「黒真珠」の名のとおり良質珠は濃い黒色をしており、とくに「ピーコックカラー」と呼ばれるグリーンブラック系のものが最も好まれます。形については、丸いものからセミラウンド、バロックまで多彩ですが、他の真珠に比べてサークル系のものが多いのが特徴です。 クロチョウ真珠は0,8㎜以上の厚巻きが主流で、赤、青、黄色系の3つの色素が混じりあい、さらに光の反射、拡張などによって神秘的な光を放ちます。落ち着きのあるダークカラーに、鮮やかな虹色の輝きを秘めた魅惑的な真珠です。 コンク真珠カリブ海に生息する巻貝のコンク貝を母貝とする天然真珠です。 色はピンク色です。淡水真珠湖や河で生息する貝から採れる真珠で、イケチョウ貝、カラス貝を母貝とします。欧米や日本でも生産されていますが、現在ほとんどが、中国揚子江流域で養殖されています。80年代までは、カラス貝を用いた養殖が多く行われていましたが、カラス貝から取れる真珠は、サイズが小さくシワが多いため、90年代以降は、ヒレイケチョウ貝を使うことでシワが少なくテリや色目の美しいものが採取できるようになりました。また、8㎜以上のサイズや、球形率のよいものも作れるよううになってきてます。淡水真珠は、無核のものが多いため、海洋産真珠に比べ軽く、3~10㎜程度と大きさに幅があるので、大小の組み合わせによって個性的なデザインを楽しめます。 マベ真珠マベは熱帯海域に広く分布する大型の2枚貝です。アコヤガイに比べて大量に生息せず、やや深いところに多い。このマベ貝から取れる真珠をマベ真珠といいます。マベは構造上、真円真珠を作るのが難しく、半円真珠が主流です。マベ真珠を最も特徴づけるのは、やはりその美しい虹色の光沢でしょう。マベ以外でもシロチョウガイ、クロチョウガイ、アワビ、淡水貝を使用してマベと同じ方法で半形真珠が作られ、こうしたものも、しばしば「マベ」と呼ばれている。しかしマベ以外の半形真珠は、一般にマベより品質が劣るものが多く、マベとは厳密に区別されなくてはならない。 |