金の基礎知識
地球上には多くの金属が存在しますが、とくに稀少で、金属特性が優れ、美しい金属は「貴金属」と呼ばれています。ジュエリーに使われる貴金属は金、銀、プラチナが代表的です。中でも金は人類との関わりが最も古い、貴金属界のリーダーです。
薄く延び、耐性が高い。ジュエリーに理想的な素材
金の英語「gold」の語源は、「きらきら輝く」を意味するゲルマン語「gulth」からといわれます。漢字の「金」も「土の中で輝くもの」を表す象形文字からきています。
特徴1 展延性に富む
金属が薄く広がり延びる性質のことを「展延性」といいます。金は展延性に富んだ金属で、1グラムの金は3000メートルの糸になります。展延性の高さは加工のしやすさに繋がり、古来よりジュエリーに重用されています。
特徴2 耐性が高い
ほとんどの化学物質と反応せず、長い間放置しても錆びません。王水(濃塩酸と濃硝酸の混合液)には溶けます。
特徴3 比重が高い
金の比重は19.32。プラチナより低く、銀よりは高い数値です。金属全体で見ると高いといえます。(プラチナ21.45、銀10.50、鉛11.34、銅8.73、鉄7.86、亜鉛7.14)
人間を古くから魅了し、特別な物として敬われた「金」
人類と金が出会った時期は定かではありませんが、そうとう古いことは間違いありません。ブルガリアのヴァルナ遺跡からは、金石併用時代後期(紀元前4500~4000年頃)の金製装身具がたくさん見つかっています。古代エジプト時代は優れた黄金芸術の宝庫です。金は王者の印とされ、ツタンカーメン王の墓からは、黄金のマスクや棺、寝台や玉座、護符、ジュエリーなど、総重量90キロにも及ぶ秘宝が発見されています。ヘレニズム時代(紀元前335~紀元前35年)の中金東地域では、すでに金のジュエリーが量産されていた模様です。肩から羽根をつけた人間をモチーフにした金製のイヤリングが流行していたらしく、微妙にデザインが異なるものがたくさん見つかっています。
古墳から見つかる金製ジュエリー
日本でも5世紀頃の古墳から、金の腕輪や指輪、金の線を巻き上げた髪飾り、「垂飾付耳飾り」と呼ばれる揺れるデザインのイヤリングや、耳輪などが見つかっています。多くは日本で作られた物ではなく、中国や朝鮮半島の製品だと思われますが、6世紀頃の古墳からは一部、国産品と思われる金の副葬品も発見されています。
マグマの中で生成した金は、地下水と一緒に岩盤の割れ目を通って地表に昇ります。途中で石英と一緒に沈殿して固まったものが、金を含んだ「金鉱石」です。金は1トンの金鉱石から数グラムしか産出出せず、10グラム以上採れる鉱山は非常に優秀です。金は川底から砂金の状態で発見されることもあります。浸食作用で山から削り取られた金鉱石は、川に運ばれ流されるうちに、砂金となって水底に堆積します。人類が最初に見つけた金はおそらく、川底で光る砂金でしょう。古代エジプト時代、ナイル川流域は金の大産地で、国家規模で採掘や採集が行われていました。金は日本でも産出します。「続日本紀」には749年、陸奥(宮城県)から砂金が採集され、東大寺大仏の建立に使われたと記録があります。平安~室町時代は年間平均50キロ、合計30トンも産金し、中尊寺金色堂や金閣寺の建造に充てられました。現在も日本での産金は続き、鹿児島県の菱狩鉱山の金鉱石からは、1トン当たり約40グラムという高品位の金が採掘されています。
ゴールドは、純粋の状態では酸素やほとんどの化学物質に対して反応を起こさないので、空気中や水中では永遠に変化せず、錆びることもありません。ただ、王水という濃硝酸と濃塩酸の混合液には溶けてしまい、また水銀と接触するとアマルガム(水銀と他の金属とでつくられる合金)になります。融点(1064℃)と比重(19.3)は銀より高く、プラチナより低くなります。
純粋のゴールドは非常に軟らかく、延びやすく、1グラムのゴールドで焼く3000メートルにまで伸ばすことができます。
ゴールドの最も優れた特徴は、加工がしやすく、長い年月を経ても腐食しにくく、輝きが失われないことです。ゴールドの尊さは旧約聖書にもうたわれており、その価値は歴史的には貨幣としてより、装飾美術品として高く評価されていました。
ゴールドが装飾品として使われたのは、その永遠性や不変性が人間を悪魔から守るとされ、魔よけとして、頭、喉、手首や耳など体の大切な部分に着けられたことから始まりました。時代を経て、ネックレス、リング、イヤリング・ピアス、ブレスレットなどのゴールド・ジュエリーになって人々の身を飾っているのです。
合金
金属を他の金属と一緒に溶かして混ぜ合わせることを「合金」といいます。ジュエリーにつかわれている貴金属は金を含め、銀もプラチナもほとんどが合金です。100%の純金(純銀、純プラチナ)は柔らか過ぎて、ジュエリーの素材としては不向きだからです。傷が付きやすく、使っているうちに伸びたり曲がったり、壊れる可能性があります。主体の金属に加える他の金属を「割り金」と呼びます。割金に使われる金属の基本は銀と銅です。合金にすることにより、耐摩耗性や強度、硬度を高めることができ、色、デザインの多様化が可能になるます。さらに、ゴールドの比重(19.3)は、鉄の2.5倍も重いため、軽い金属と合金にすることによって、軽量化することもできます。
金のベースカラーはもちろんイエローゴールドですが、割金の種類や配合によって、さまざまなカラーバリエーションが生まれます。銀を多く加えるほどグリーンゴールドに近づき、銅を多く加えるほどレッドゴールドに近づきます。その他、ニッケルやパラジウムを加えることもあります。
ゴールドの純度(品位)を表すカラットは世界共通の単位で、K、ktなどと表示されます。主な品位区分には、K24(純金)、K22,K18、K14などがあります。なお、18KのようにKが後に付く場合もあります。
一般的に日本では、金含有率は24分率で表されています。日本やイタリアで作られるゴールド・ジュエリーはK18が中心ですが、アメリカでひゃK14、イギリスではK9が普及品の中心となっています。
純金は傷がつきやすいので、ジュエリーとしては敬遠されがちでしたが、「純粋」「本物」に対する根強い願望があり、現在では微量の添加物を加えて、耐摩耗性や硬さを向上させ、熱を加えても軟化しにくく、経時軟化のない「990ゴールド」や「999ゴールド」などの高品位ゴールドが開発されています。
カラーゴールド
ゴールドを合金にする目的には「色を変える」ということが挙げられます。プラチナや銀の合金の色はほとんど純粋な状態と変わりませんが、ゴールドの場合は加える金属の種類と割合によって、大幅に色を変えることができるという大きな特長をもっています。それゆえ、ゴールド合金をカラー・ゴールドというのが一般化したわけです。
信頼の証、造幣局の禁制品検定制度
宝石の重さの単位・カラットと呼び方が一緒で紛らわしいのですが、宝石用のカラットは「ct」、金合金用のカラットは「K]と表記します。K18の読み方は18カラット、18キン、もしくはケイ18となります。
品質を明確にするために、財務省造幣局では金製品の国家検定を実施しています。検定を受けるか否かは販売者の任意で、合格すると製品に証明の刻印が打たれます。刻印は24分率ではなく、1000分率が使われています。